★科学者になるまでは・・・

パスツールは1822年、スイスの田舎町で皮なめし職人の家に生まれました。
小学校の頃は目立った生徒ではなく、大学に入っても化学が中ぐらいの成績といった程度でした。
彼がめきめきと頭角をあらわすのは大学を卒業したあとでした。
そのときまで、彼は自分の一生を科学にささげようとは考えてもいなかったのです。

彼が子供のころ、唯一才能を発揮したのは絵を描くことでした。
彼はお母さんをよく描きましたが、彼の描いたお母さんの似顔は本当にそっくりでした。
彼女と初めて待ち合わせる人が、その絵を参考にして探すと、人ごみの中でもわけなく見つけ出すことができたぐらいだったそうです。
物事をよく観察する能力はここで培われたのかもしれません。


★主な研究・業績

「微生物の自然発生説を否定」
パスツールは、発酵(ある物質が細菌などの働きで分解すること))の原因を、科学的に説明することに成功しました。
当時の医学・生物学は驚くほど神秘的で魔術的でした。
ボウフラは水中からひとりでにわくと信じられていましたたし、穀物からねずみが発生したと発表する科学者もいたぐらいです。
このような「自然発生説」(生命は生きていない物質から生まれることがありうるという考え方))は当時の科学界に広まっていた考え方でした。
パスツールはそんな風潮の中、「結果があれば必ず原因がある」ことを実証したのです。
このことから、病気の原因を病原菌(病気の原因となる細菌)に求める細菌学が発達し、近代医学へとつながるのです。

「ワインの腐敗の原因」
1854年、パスツールはリール大学の理学部長に選ばれ、フランスの重要産業であるワイン作りの問題に関心を寄せていました。
当時のワインは年数を経るとすっぱくなり、そのことでメーカーは困っていました。
パスツールは、良いワインの沈殿物(沈んで底にたまる物質)を取って顕微鏡で調べ、それとすっぱくなったワインの沈殿物を比べてみました。
そしてパスツールは、ワインをすっぱくする特別な酵母があることを発見しました。
パスツールは、ワインが出来上がったら、セ氏およそ50度でゆっくりと熱すればよいのだ、といいました。
こうすれば、ワインの中に残っている酵母はすべて殺される、その後ワインに栓をすればすっぱくなることはないはずだ、と。
それ以来、ゆっくりと熱して、微生物を殺す方法を「パスツール低温殺菌法」と呼ぶようになりました。

「狂犬病ワクチンの発明」
彼は「人間の病気についてはどうなのか」、と考え始めました。
もし傷口や手術で切ったりした部分を、パスツール低温殺菌方で殺菌したらどうなるだろう。
彼はお医者さんの反対に合いながらも、細菌を殺すために医療器具を煮沸し、包帯に水蒸気を通すよう強制しました。
そのおかげで、死亡率は下がったのです。
すべての伝染病は細菌によって生じるということを実証し、これまで清潔でなかった病院での患者の死亡率を下げました。
 
パスツールは狂犬病ワクチンの発明者としても有名です。
狂犬病は、狂犬病ウイルスによる人と動物共通の伝染病で、発病すると、ほぼ100%死亡するという非常に恐ろしい病気です。
この病気は、狂犬病にかかっている犬などに噛まれることによって起こります。
「ワクチン」というのは、生物体の免疫反応を利用して病気を予防したり、治療したりするもの。
免疫反応というのは、前もって毒性の弱い細菌やウイルスを体にいれておくと、いざ本物が入ってきたときに撃破できるという仕組みです。
彼のおかげで医学や衛生学は進歩し、私たちの寿命も長くなったともいえるかもしれません。



★エピソード

パスツールは1868年、46際のときに脳内出血で倒れ、体が半分動かなくなってしまいました。
しかし、彼の研究への情熱はまったく衰えを見せませんでした。
狂犬病ワクチンを作ったのは、このあとのことです。